ガイアに〝夜明け〟は 来るのか!? 新ガイアの経営メンバーと再生に必要な具体策

2023.12.15 / ホール
民事再生の〝生命線〟Jトラスト  

「主文・再生債務者について再生手続きを開始する」—。  

令和5年11月2日午後1時30分。ガイアの債権者集会が開催されていたその時、東京地方裁判所民事第20部で、そんな決定が下された。  

株式会社ガイアとその子会社6社(株式会社ガイア・ビルド、株式会社ユナイテッドエージェンシー、株式会社トポスエンタープライズ、株式会社ジャバ、株式会社MG、株式会社MG建設)のすべてで、再生手続開始が決定されたのである。これにより民事再生はスタートし、長い再生への道のりが始まった。  

まず注意したいのは、資金援助を行うJトラストの意向だ。 銀行を初めとする大手金融機関はすでにガイアへの新規融資を行っておらず、Jトラストは事実上の生命線となる。しかし同社は「パチンコホール経営を行わない」としており、かつ「1年は雇用を守る」とも明言している。額面通りならば猶予は1年。その後は経営成績次第であろう。雇用を守るとはいえガイア店舗でのホール勤務を保証してはいないから、店舗閉鎖となれば子会社への出向もあり得るのだ。

ガイアの新しい取締役とは?  

では、新生ガイアを率いるのは誰か。 代表取締役は大山努氏。良原一族の支配下でも代表取締役を務めた人物だが、管理畑の人材であり現場の差配には物足りない。そこで、進藤太郎氏、真田剛志氏、三木誠氏、宮澤成幸氏、4名の新任取締役が実質的な司令官となる。〝パチンコ〟に興味がなかったといわれる良原一族とは違い、十分なホール経験を持つ者たちだ。特に進藤氏は旧ガイアの営業本部副本部長を務めていた人物で、現場視点からの再生を担う。  

しかし、この4名には懸念もある。真田氏は、ガイアとセットで民事再生を行うジャバの代表取締役なのだ。同じく三木氏はガイア・ビルドの、宮澤氏はトポスエンタープライズの代表取締役である。また、進藤氏はガイアグループの株式会社ワンフォワード代表であり、資金繰りの舞台となった「GF投資ファンド投資事業有限責任組合」で業務執行組合員を務めた。そして、Jトラスト社は今回、民事再生7社にプラスしてワンフォワードの再建まで支援すると明言。  

すなわち各人ともガイアグループ凋落の一端を担っており、良原一族を追放したところで本当に再建への手腕を持ち合わせているのか、疑問が残るのだ。

稼働を大きく伸ばした旧メガガイア  

Jトラストは金融のプロフェッショナル軍団であり投資効率を重視する。仮に「ガイアに魅力なし。トポスに魅力あり」とソロバンをはじいた場合は、躊躇なくガイアの店舗を整理し、余剰人員をトポスへ回す可能性もある。ガイアが自分たちの店舗と「ホールでの雇用」を守ろうとするなら、自身の足で立ち上がらねばならない。  

しかし、主力店舗(特に大型のメガガイア)は良原一族の元で多くが売り払われてしまった。中には市場価格の半値で手放してしまった店舗すらある。他社へ売却された主なメガガイアを見てみよう<表>。 

それなりに稼働していた店舗もあるが、ほとんどは売却後に稼働を大きく伸ばした。その要因は出玉か、イベントか、人気機種の台数か。はたまた店長の能力か、企業としてのフィロソフィーか。要素はさまざまあるだろう。ただ、他社の運営で伸びるなら、立地にはじまり建物の大きさや形状など、メガガイアの店舗開発は間違っていなかったということ。適切な予算配分と人材教育を行う〝まっとうな経営者〟がいたなら、倒れることもなかったのではないか。

ガイアはまだ死んでいない  

では、残された90店舗弱をすべて1000台規模のメガガイアにすれば再建できるだろうか? もちろん不可能である。そんなことをしようものなら虎の子の50億円では足りない。一度不渡りを出した以上、新台の購入は現金一括が基本となるだろうし、店舗を閉鎖するにも特別損失を計上せねばならない。新経営陣は、残された数少ない高稼働店を維持して毎月の支払いを行い、中小店舗は高い利益水準で自らの閉鎖費用を捻出する形となる。〝選択と集中〟を行いつつ〝回収と閉鎖〟を同時に進める、まさに綱渡りの運営だ。  

それでも、パチンコを知っている人間が経営層に入ったのは大きい。民事再生で債務は圧縮され、毎月の支払いを軽減できるのだから現場の自由度は高まるだろう。大型店は減ったものの、例えば神奈川のガイアネクスト海老名駅前店は地域一番の集客力を誇る。千葉のメガサイバーパチンコ新鎌ケ谷店は駅前唯一のホール、かつ1006台の設置台数を持つし、広島や山口にはメガガイアの大型店を数多く残す。愛知のメガガイア一宮店は1500台を超え、静岡のガイア清水堀込店は無印の〝ガイア〟ながら、PS合わせて776台。コンコルドやマルハンの大型店からは距離があり、独自の戦いを展開できそうだ。  

また、かつて本社のあったガイアネクスト花見川店は、民事再生法適用申請の翌日、平日にもかかわらず開店1時間で50人以上が1円パチンコに着席した。同店のパチンコ台数はわずか152台。すべて低玉だが、家賃不要なら〝十分〟だろう。再生の過程ではこういった低玉店が、雇用を維持する重要な拠点となる。

つまり、ガイアはまだ「死んでいない」のだ。

ガイア清水堀籠店 設置台数は、競合するマルハン2店舗より多い776台。
無印ガイアにもテコ入れ次第で可能性のある大型店はある。
ガイアに足りなかったモノ  

ガイアがまだ〝千葉県の大手〟だった頃。ある営業マンが部品を届けにガイアの某店舗へ向かった。事務所に入ると店長がなにやらポスターを貼っている。そこには大きな筆文字で「打倒アイオン!」と書かれていたそうだ。

当時の話を営業マンはこう語る。  

「アイオンって、ガイアですよ。仲間を打倒してどうするんですか。倒すなら普通、地域一番店でしょう?」「アイオンもガイアもせいぜい地域5番店なのに。あのポスターを見て、この法人は長くないと思いましたよ」  

そんな話を聞いたとき、メガガイア清水町伏見店をM&Aしたマルハンメガシティ三島駿東店を思い出した。同店の競合は、稼働でマルハン函南店。距離ではマルハン沼津店。カニバリが避けられない中で〝メガシティ〟の看板を背負って出店したのだから、既存店の遊技客減少は避けられない。しかし三島駿東店の秋山店長は〝打倒〟ではなく、「函南や沼津は海物語が強いので三島は他の機種に力を入れる」「我々の存在価値は『マルハン』のファンを増やすこと」と明言したのだ。  

ガイアは社内で足を引っ張り合い、マルハンは店舗間で協力した。両社の差を感じるエピソードである。

他にもガイアは設定4以上を使うときに稟議書が必要だとか、ストック飛ばしを若い社員にやらせつつ常連に「こちらが本日のオススメです!」と案内させ続けたとか、〝害悪〟と呼ばれるに足るエピソードは数多い。回収ばかり命じられた店長はストレスから逃れるため「予算さえあれば客を呼べるんだ!」と自己評価を高く持ちがちになる。そんな店長に予算を与えても、これまで低設定を強要されたストレス解消とばかりに設定6を無駄打ちしてしまうだろう。新経営陣はまず店長らと語り、教育を施し、万が一再生に失敗した際でも他店で活躍できる実力を付けさせねばならない。  

経営再建に必要なのは、ソロバンを弾いた後、未来を共有し、リスクを共有し、価値観を共有すること。社員と心の同盟を結ぶ気概がなければ、民事再生はなし得ない。

現場の努力が再建のカギ  

前述の通り、メガガイアを買い取った法人は軒並み稼働を伸ばしている。これは「残されたガイアも工夫次第で業績を向上させる可能性がある」との希望ではないだろうか。もちろん稼働アップは一朝一夕には為し得ないが、世代をまたいで強豪ホールを取材し続けた点、1人のファンとして長年遊技し続けた点をもって、ガイア再生の具体策を語ってみたい。

【機械を寄せる】

まず参考にしたいのは、スーパーD'ステーション上越店(旧メガガイア上越店)だ。訪問してみると分かるが、以前と違い「2台設置」を多く見かける。バラエティーの定番は1台設置なのに、ここは2台。結果、常連同士や友だち同士で、今のリーチは惜しかった、その展開で外れるのかと、ワイワイガヤガヤ楽しむ光景を見かけるようになった。隣で打つのが知り合いでなくとも、チラ見して演出を把握する経験は誰しも持っているはずだ。

D'ステーションを運営するNEXUSは現在40店。店舗の多さは設置機種の多さ。80店舗を超えるガイアなら、各店のバラエティーで抱える1台を組み替え、移動させ、2台設置を生み出すことは容易だろう。すなわち〝機械を寄せる〟。コストは格安だ。

言うまでもなく人気機種も〝寄せる〟。稼働回復の見込みなしと判断した店舗にあるカバネリや沖ドキ!GOLD、からくりサーカスや炎炎、グランベルムやL戦国乙女4などは、稼働を上昇させている店舗や旗艦店へ移動させる。ユーザーは「店舗のやる気」を人気機種の増台で計る傾向があるからだ。

中古で200万円を超えるような人気台増台も店舗の宣伝費としてアリだろう。

【告知物を寄せる】

次に参考とするのはメガフェイス1180座間(旧メガガイア座間店)。九州で実力を付けたフェイスグループが関東へ殴り込みを掛け大成功を収めた。見学した業界関係者の多くが店内の告知物に目を見張る。

「必要な物を、お客さまの目に付く場所へ、適切に設置する」。当り前のことを微に入り細に入り徹底している。例えば、中央通路を歩いている際、バラエティーコーナーに何が設置されているか分からないホールは多い。メガフェイス1180座間では機種ラインナップを目立つよう配置し、まようことなく打ちたい台へたどり着ける。シマ上の告知物はホームベース型の吊り下げフラッグであり、形状そのものが下向きの矢印と同じ働きをするためメイン機種も探しやすい。

また夕方以降になれば「翌日の来店」を促す告知物へ切り替える。WEB広告やLINE、XやYouTubeなど、ネット情報花盛りの昨今だが、リピーターの確保に最も効果的なのは「店舗内の告知」。

効果の薄い告知は削除し、効果のあるものにリソースを突っ込む。最良のタイミングで最良の場所へ集中投下。まさに〝告知物を寄せる〟である。

【出玉を寄せる】

低玉専門店はそもそも大きな利益を取れないし、大型店はフラッグシップになってもらう必要があるため、どちらも当面は薄利での営業を迫られる。最終的には30店舗くらいへ圧縮すると仮定し、約50店舗は利益回収店として引き続き厳しい運営を担ってもらう。すなわち店舗間で出玉を寄せる。

店舗間で出玉を寄せたら、今度は店内で出玉を寄せる。

マルハンメガシティ三島駿東店(旧メガガイア清水町伏見店)はM&A後、広い通路のいわゆる〝デカ島〟を4本作った。デカ島に設置する機械は一軍の人気機種であり出玉への期待も高まる。しかし実際に店舗を訪問すると、全国的にはそれほど人気ではない、ややもすると「俺は好きなんだよな」と自嘲するような不人気台でも出玉に期待できたりする。

一般的に「出玉を寄せる」といえば人気機種優遇を想像しがちだが、重要なのは客数を向上させること。特にパチンコはアウトが向上し始めた機種の〝玉粗利〟に注視したい。〝抜いても抜いても稼働が落ちないぜ!〟と笑っていると地獄が待つ。

まずは店舗間で機械と出玉を寄せ、ファンに気付きやすいノロシを上げる。店舗内でも出玉を寄せ、告知物を微細に調整することで、久し振りに来店したファンを店内で迷わせず、翌日の来店へもつながるように準備しておく。

<総括>

不人気台だからと何週間も設定を放置したり、逆に設定を入れる根拠が個人の感覚であったり、目の止まる場所の告知物が日焼けするほど古くなっていたり、設定1の機種を〝おすすめ〟したり。そういった古い「ガイアらしさ」を捨て、ぜひとも再生を成功させてほしい。

腐っても業界6位(2023年10月末)。ガイアの夜明けはパチンコの夜明けにも通ずるはずだ。

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