【金曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(229) 施策のタイミング
皆さんこんにちは、アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林です。9月に入りました。これからの時期は例年客数が低下傾向になります。そうなるといろいろな仕掛けで底上げを考えるものだと思います。
先日支援先にて、この秋の仕掛けについて相談がありました。具体的には、
「秋の稼働低下対策として設備の見直しをしてみてはどうか」
「椅子の張替えと、右手置きの導入はどうだろうか」
というものです。確かに椅子はそろそろ変えてもいい頃合いであり、各台計数なので右手を置く台があると遊技の快適性も向上しそうです。この施策の導入自体はほぼ決定で、あとは「時期の選定」だけとなりました。
① 9月の3連休前
② 9月の3連休後
③ 10月の3連休前
④ 10月の年金後
⑤ そのほかの時期
このような案が出て、「さてどうするか」を話し合ったところ、お店の意見は、
・そのほかの時期で、11月
となりました。理由は、
・9月は連休も多くまだ夏の勢いもあって乗り切れそう
・10月は年金支給もあるので乗り切れそう
・11月は3連休が2回あるが例年、最も落ち込む時期だろう
という予測からです。お店としては最も落ち込む時期の対策を重視する考えがありました。この考えにもそれなりに説得力がありますが、「投資効率」という観点で考えると、「他にもっといいタイミングはないか」と考えたいところです。
この連載では過去に何度か、SWOT分析という考え方を紹介しています。簡単に解説すると、
・自社の強み(S)・弱み(W)・機会(O)・脅威(T)を列挙して、各々を重ね合わせて方向性を導き出す
という考え方です。例えば「強みを機会に重ねると、良い部分を良い時期に投入するので効果が高そう、悪い時期に動いても効率が悪そう」となります。
戦略の基本は「機会(チャンス)に仕掛ける」です。その意味で今回の施策(椅子新調と右手の台)をいつすべきか?と聞かれたらそれは「最も反応のよさそうなチャンスのあるとき」であり、上記の時期の中で選ぶとするなら「⑤のその他の時期で、12月中旬」ではないかと思います。
もちろん秋の落ち込みに対する不安もあるかもしれません。しかしせっかくの投資はマイナスの補てんではなくプラス部分を伸ばすために行うべきです。
「秋の対策」というのは本来、お盆前から始めているべきことです。お盆前に伸ばす方向で何らかの施策を打ち、それで結果的にお盆後に落ちたとしても、これまでより高いレベルに落ち着くことになるのでその数字が今後のベースになります。落ち込んだ時の底上げを主眼とするのは維持が目的となり、伸ばすことはできないです。この意味で、「施策」を打つのは良い時期の前、今から考えるなら「年末営業の前」となります。
このSWOT分析、いろいろな場面で判断基準に使えます。例えば入替という戦術。入替は稼働が低迷したり利益確保ができていなかったりする機種を差し替えるため行います。この視点で考えれば入替は「弱みを補う戦術」といえます。上記のとおり一般的には強みを伸ばすことを優先したほうが効率が良いので、その意味で考えると入替の優先順位は低くなるはずです(もっと、強みを伸ばすことに投資をしたほうが良いはず)。入替を戦術の柱にしてもなかなか業績アップにつながっていないのはこういったことからも至極当然のことといえるでしょう(ちなみに過去において入替に効果があったのは、入替自体が「強い施策」だったからです)。
現在は仕掛けをしてもなかなか効果が得られなくなっています。だからこそ、できるだけ効率を考えて、弱みではなく強み、底上げではなく伸ばすこと、良くないときではなく良いとき、を意識して施策を打つようにしてほしいと思います。秋=良くない時期は守りの時期、と捉えてください。
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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。
上野ハム太郎約5年問題を報告
一般ユーザーの視点で考えると、
「リニューアルオープン!椅子の張替えします!!」
とか言われても「そう……」って感じですよね。
むしろ知らないうちに設備が充実していたと
後から気付くくらいの方が誠実さを感じてしまうのは僕だけでしょうか。
仕掛けのタイミングが冬というのは理解できました。