


パチンコ業界の現状をどのように見ていますか。
榎本善紀社長(以下、榎本) ここ数年のパチンコファンの減少についてはかなり危機感を持っています。企業に成長期があって、安定期があって、衰退期があるとすれば、現状の業界はまさに衰退期といえるのではないでしょうか。その逆境からどうやって盛り返していくか。いろんな業態の参考事例などをもとに、新しいビジネスモデル構築が必要な時期ではないかという気がしています。
そうしたなかでもパチスロ機からパチンコ機へのシフトが成功し、高収益を上げているホール企業もあるようです。
榎本 パチンコのハイスペック機が主流になってきて、客単価も上がっていますし、パチスロ機からパチンコ機へうまくシフトできたりした勝ち組のホール様にとっては利益が上げやすい状態になっていると思います。ただ、それは本当に長く続くものなのでしょうか。一歩引いて見ると、ファンが減っていてパイ自体はどんどん小さくなっているし、ダイコク電機さんのSISデータを見ても、平均稼動率がかつてないほど下がってきており、業界が危機的状況であることには変わりないのではないでしょうか。参加人数と平均稼動が下がっている状況を「いま利益が上がっているから」というだけで業界が景気のいい方向に進んでいると考えてしまうのは、非常に危険なことだと思います。
何か手立てを考えなければこの先はかなり厳しい、と。
榎本 いままでどおりのことをやっていれば好転する材料は何もありませんし、新しい展開を考えていかなければいけません。現状のパチンコ業界は、一時期のゲーム業界のようにコアなユーザーのみを追い求めている雰囲気がありますが、それは一般ユーザーを遠ざけ、パイの縮小につながっていきます。ゲーム業界はここに来て、「ニンテンドーDS」や「Wii」など進化したアナログでユーザーを広げることに成功しています。そうした事例は非常に参考になると思います。また、携帯電話の事例などもすごく参考になるのではないでしょうか。携帯電話が通話機能だけを追求していたらおそらくここまでは普及しておらず、ネットがあり、メールがあり、カメラがあり、と通話機能以外のエンターテインメント要素という付加価値によって、新機種が出るたびに買い換え需要が生まれるほどに発展しました。パチンコ業界もパチンコだけにとらわれず、他のエンターテインメントと融合していくことで、新しいビジネスモデルにつながっていき、次のステージに上がれるのではないかと考えています。
新しいビジネスモデルの具体策はありますか。
榎本 他のエンターテインメントとの融合という意味では、これまでもタレントや有名キャラクターのライセンス取得などでエンターテインメント性の強い機械を提供してきましたが、今後は、コンテンツの製作段階から関与することにより、弊社自身がコンテンツホルダーになることも目指していきます。今、吉本興業様とは、さまざまな取り組みを連携しながら進めていて、すでに弊社が所有する商業施設「サンシャインサカエ」で飲食部門やイベントを協力しながら進めています。今後は、さらに深い結びつきをもって遊技機開発やホール様のイベント支援も連携して進めていきます。
また別の視点では、今後業界が永続的に発展していくには、パチンコそのものやパチンコ業界が世間から批判されない施策を真剣に考えていかなくてはいけないと思っています。
パチンコ業界全体のイメージを変えていく必要がある、と。
榎本 業界全体がもう少し世間との温度差を計らないと、この先長く商売していくのは難しいのではと考えています。パチンコ業界はパチンコをやらない人からはものすごく否定的にとらえられる業界であるということを今一度、認識しなくてはいけません。例えば、業界の景気が良くないからといって、業界を盛り上げるために今までより射幸性の高い機械を出せば、確かに流行るかもしれませんが、それは同時にパチンコをやらない人に対して嫌悪感を与えてしまう可能性があり、派手なブームになれば「あの業界は何だ」と世間に非難されてしまう。そうした世論の反発を受ければ規制を強化せざるを得なく、その結果、射幸性を落とさなくてはいけなくなります。今までも、パチンコ業界はそういったことを繰り返して何度となく業界の低迷を招いてきました。今後は、参加人口が減っていることでパチンコをやらない人の比率が増えていっている上に、不況下という状況が重なって、世論の反発を受けるリスクも飛躍的にアップしていくでしょう。ですから、流行らせる、目立つという部分でのリスクを今まで以上に見る必要が出てきているのです。
パチンコ業界の景気が良くなったら叩かれるという構造的な矛盾を根本的に解決しないと、社会全体が低迷する中で飛躍することは非常に難しいし、そういった悪循環を断ち切るためにも、不況下でも世間から非難をされない社会的存在意義を持たなくてはいけないと思います。




